篠山の祭り


熊野新宮神社の八朔祭


八月三十一日の夕方、七つの山車が境内に集まってくる。氏子の各集落ごとに、伝統の秘法を駆使した「鯉の滝登り」 「孔雀」「鷲と兔」などの飾り付けが施されている。そもそもは、農作物を神前に奉納していたが、 戦国時代後期になると屋台に手工品や造り物を載せて奉納するようになった。そして、江戸時代のはじめ収穫物を 屋台に載せて神前に奉納するようになったといい、そのころから車を使用するようになった。そして、明治時代、 各集落ごとに曳山として山車が新造され、飾り物にも趣向が加えられ、現在のような八朔祭りのスタイルができたという。夕闇が濃くなってくると、境内に勢ぞろいした山車の提灯に火が入る。それぞれの山車に飾られた造り物も、昼間とは一味もふた味も違った艶やかさに彩られ、一気に祭りの雰囲気は盛り上がる。そして、各山車が神前を練りはじめると、祭りは勇壮さな表情をみせてくる。



・祭りの提灯 ・ 飾りつけの終わった山車 ・ 神紋「烏」の描かれた祭り提灯 ・ 宮入を待つ山車群


・坂道を渾身の力で宮入する ・ ずらり揃った各集落の高張り提灯 ・ 神火を貰う


・宮入した山車の提灯に火が入る ・ 見事な飾りの鷲 ・ 七基の山車が順番に本殿前を荒ぶる


・神前で祓いを受ける ・ 勇壮に練り歩く ・ 荒ぶったのちは飾りを堪能する ・ 帰り道を照らす祭りの灯り


今年祭りのハイライトの一つである神社境内への坂道を一気に駆け登る宮入を見ることができた。 宮入をしたのち、すべての山車に灯りが入り、順番に境内を力一杯に荒ぶる。そして、山車が一通り荒ぶったのちは それぞれの山車ごとに趣向が凝らされた飾り付けを見物する。宮入→山車練→飾り物と見所の多い祭りであり、かつては 境内に並べられた山車の飾りつけに大勢の観光客が押し合いながら見入ったという。しかし、見物客の姿は お世辞にも多いとはいえない。
八朔とは八月一日のことだが、ここでは月遅れの九月一日を八朔として祭りが行われている。 それもあって、各地の祭礼が土日に行われるなか、伝統通りに八月三十一日を宵宮、九月一日を本宮として 祭礼が奉納されている。それゆえに、今年は平日となってしまった。生活スタイルの変化、少子高齢化といった逆風のなか 祭りを続けていくのも難しくなっているのではなかろうか。この祭りが確実に伝統を守りながら次世代へと引き継がれることを 祈るばかりだ。

【撮影:2009年8月31日】

→2008年の八朔祭 熊野新宮神社