丁子紋
モルッカ原産の薬味や漢方薬の原材料、
日本には中国から伝来、その香と高貴性が尊ばれた。
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インドネシアモルッカ群島原産のフトモモ科の植物でクローブのこと、ユーカリやグアバと同種の植物である。クローブの花蕾は釘に似た形をしているため、中国では「釘」と同義の「丁」の字を使って「丁香」「丁子」の名があてられた。
非常に強い香気を持っているので百里香という別名があり、インドや中国では紀元前から殺菌・消毒剤に使われていた。また薬味や生薬の原材料でもあり、漢方薬では花蕾を公丁香と称し、果実を母丁香と称して医療に用いた。日本にもかなり古くから伝来していたようで、 正倉院の宝物のなかにも当時輸入された丁子がある。中世の貴族は花蕾を干して香料にし、薬としても役立てていたようだ。また、丁子は高貴薬で香料であったことから、七宝のひとつにも数えられている。
図案化され紋章となったのは花蕾の公丁香であった。丁子が家紋に用いられるようになった理由は明確ではないが、貴重な輸入品であったこと、七宝に数えられていたこと、むかし行灯の燈芯が丁子形になると福徳入来の前兆として喜ばれたことなどから、紋章としても人気が出ていったようだ。丁子はときに丁字と書くこともあり、「十字の間違いかな?」とか「沈丁花のこと?」と勘違いするひともある。また、紋章の図柄を見て「大根の一種?」と間違うひともある。
丁子紋は、一から九までその数によって「一つ丁子」「九つ丁子」と呼び、その配置によって「違い丁子」「抱き丁子」「丁子車」などと呼ばれ、バリエーションの多い家紋である。丁子紋を使用する家としては公家の三条西家が知られ「八つ丁子車」と呼ばれている。三条西家は正親町三条実継の子権大納言公時を祖とし、一門の押小路家も丁子を家紋とした。その他、藤原氏流では甲藤、新庄、松村、竹尾の源氏系では真崎、志村、幡野、石崎の諸氏。ほか菅原氏系の来栖氏、滋野氏系の望月氏などが使用している。
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写真:渡瀬家の大根紋、確かに似ている
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どこの家にも必ずある家紋。家紋にはいったい、
どのような意味が隠されているのでしょうか。
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