麻 紋
麻はマリファナの原料として悪名高いが、
古来、衣料・薬用として有用な植物であった。
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細麻の葉 |
持ち合い麻の葉 |
三つ割り麻の葉 |
三つ盛麻の葉
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麻は中央アジア原産とされるアサ科の一年草で、広義には麻繊維を採る植物の総称である。かつてはクワ科とされていたが、近年の研究成果によってアサ科にまとめられた。日本にも古来より自生しており、皮から繊維をとり、その実は食用として利用され、種子から採取される油は食用、燃料などに利用された。葉・花・実には薬効があるが、この植物から採れる麻薬は特に大麻(マリファナ)と呼ばれ、麻は栽培しただけで罪に問われる怖い植物でもある。麻に含まれる陶酔成分は古代の神事に用いられたようで、神道では神聖な植物として扱われた。いまも、神社などに「大麻」と書かれている札をみて驚かされるが、「たいま」ではなく「おふだ」と読むそうだ。
木綿が普及するまで、麻は日本人にとって主要な繊維原料であり、糸、縄、網、布、衣服などに広く使われていた。
『万葉集』に「上毛野 安蘇の真麻群 かき抱き 寝れど飽かぬを あどか吾がせむ」という恋歌が
あるように、古来、上野と下野が産地として有名だった。鎌倉時代には「麻の葉つなぎ」「麻の葉くずし」などと呼ばれる模様が生まれ、建築、染め織、漆芸などに用いられ、やがて家紋としても用いられるようになった。
麻紋には麻の葉の形をした葉形のものと、六角形をもとにした星形のものとがある。徳島県鳴門市にある大麻比古神社は、古代の忌部氏にゆかりの神社で、神紋は星形の麻紋である。忌部氏は、木綿・麻布などを朝廷に貢上し、それは大嘗会の用に供された。いまも、大麻比古神社は衣料の神様として崇敬を集めている。
麻紋を用いる家は少数派に属し、江戸時代の「武鑑」類にも見当たらない。大麻比古神社の神主家の永井氏のほか、上代の麻の産地から発祥した麻生(麻布)、麻(阿佐)、麻田氏などが用いていたようだ。現代では、栃木県、福島県などに麻紋を使用する家があるというが、むかし麻の産地であったことにちなむようだ。
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・写真:
K'sBookshelf 辞典・用語 花の名前小辞典 けな-けん さん
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どこの家にも必ずある家紋。家紋にはいったい、
どのような意味が隠されているのでしょうか。
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