篠山の歴史・見処を訪ねる-犬飼


上田家住宅







かつての当主の名が古式然と刻まれた石標

上田家住宅は、犬飼の大歳神社西方の山麓にあるかつての庄屋屋敷である。規模は桁行八間(16.146m)、梁間五間(10.105m)、 屋根は茅で葺かれている。平面は東に土間を設け、西側を床上部とし、西南隅は床棚書院を備える座敷とする他、 南面中央に式台玄関を設けられているというが、実際に見ることはできなかった。屋根裏から発見された祈祷札に宝暦八年(1758)との 年号があったことと、建物の形式から十八世紀中ごろに建設されたことが知られる。 全国的にみても民家建築の建築年代が特定できる例は少なく、丹波地方の茅葺民家の好例として、平成十六年(2004)に 国指定の重要有形文化財に登録された。
屋敷母屋の傍らに立てられた国指定文化財を示す石碑を見ると「大庄屋 取締郡代 第二十九代 上田伍兵衛源理義」と書かれている。その 古式然とした名乗りに家の歴史と誇りが集約されたようであり、かつての上田家の格式のほどが偲ばれる。全体に荒れた感じが漂うものの、 庭や屋敷周囲が整備されれば、かつての立派なたたずまいを取り戻すことは間違いない。いずれにしろ、中世の歴史をいまに伝える貴重な建物だ。