低山歩こう記-浜谷・矢代


盃ヶ岳に登る

・2009年09月17日



川北の黒豆畑越しに盃ヶ岳を見る
 
 
盃ヶ岳は篠山市街の西北に位置し、ちょうど篠山警察・篠山産業高校の後方に聳える標高501mの山である。 名の通り盃をひっくり返したような山容で、 三岳・小金ヶ嶽などの多紀アルプスの前衛にあたる山となっている。
篠山警察・篠山産業高校のあるところは、戦前、歩兵第70連隊の本営が置かれたところであり、盃ヶ岳は連隊の朝の調練や多紀連山を舞台とした山岳訓練を行った山として知られている。西方にあるユニトピアささやまは、家族憩いの休暇村として人気を集めているところだ。また、盃山頂上には在地土豪の畑氏が築いた山城址があり、 波多野氏の狼煙山として重要視された歴史を有している。



盃ヶ岳へ:0956 → 山麓、春日神社の鳥居 → 登り口:1010 → 整備された道 → 中腹からの展望

南山麓の登り口にあたる浜谷は、かつては里山としてアベマキやコナラの林が広がり、スギ、ヒノキなども植林される など地元の人々にとって大切なところであった。近年、「ひょうご豊かな森づくり構想」に基づく里山林整備事業に よって景観や多様な動植物を保全し、保健や森林学習の場に活用するため、森林整備や歩道が行われた。
浜谷池の北西端より中腹の東屋まで立派な登山道が整備され、登りながら見る篠山市街の展望は素晴らしい。そして、 東屋からの展望は抜群で、弥十郎が岳から大野山、松尾山に白髪岳までが一望の素晴らしいものだ。整備された登山道は 東屋までだが、そこから山上までも明確な山道があり迷うところはない。



東屋から白髪岳・松尾山遠望:1031 → 多紀アルプスを見る → 山上への道 → 山上の標識 → 盃ヶ岳城址主郭の祠:1100



主郭から西の曲輪へ → 城址を横断 → 城址北西の片堀切:1159 → ユニトピア篠山へ → 土橋のような道:1206

山上の城址は東方を主郭として西方に階段状に曲輪が築かれ、腰曲輪、竪堀なども設けられている。さらに、北西のユニトピア方面に通じる尾根には土橋を伴った片堀切られている。削平も甘く小さな城だが、登ってみて篠山盆地北西の城砦として格好の地にあったことがよく分かる。 城址は全体を雑木が覆って狼煙山らしい見晴らしは望めなかったが、主郭北東端からは三岳・西ヶ嶽を目前に見ることができた。
城址を散策したのちは、ユニトピアへとつづくエコロジカル登山道をのんびりと歩いていく。木立の間を通じる道は快適 で、気分がリフレッシュしてくるのが分かる。最後は急斜面を下ることになるが、丹波名物である獣除けの柵を 抜けると、ユニトピアのアスレティック場へと降り立つ。


エコロジカル登山道の標識 → 軽快なコース:1223 → 階段を下りる ・ユニトピアに下山:1244 ・ユニトピアの桂並木

かつて、多紀連山における連隊の厳しい訓練を耐え抜いた兵士たちは「丹波の鬼」と恐れられた。しかし、一方で訓練の厳しさに耐えかねて盃ヶ岳付近の山では多くの自殺者を出したともいわれる。たしかに、現在のような整備された道もなく、 三十キロ以上の背嚢を背負い銃剣を担いでの演習は耐え難いものであったろう。
明智軍の丹波攻めに抗した中世の山城址、戦前の軍隊演習の歴史など、武張った印象が強い盃ヶ岳だが、 四季を通じて小鳥のさえずりが谷間にこだまし、春にはコバノミツバツツジが全山を赤く染め、 秋には毎日のように丹波霧が見事な雲海をつくる素晴らしいところだ。山上から篠山市街を眺めれば、 自由に登山が楽しめる平和な現代に生まれたことがありがたく思えてくる。
【登山メモ】 警察前スタート:0930 → 城址探索:60分

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