篠山の祭り


沢田八幡の鱧切り祭り


沢田八幡神社の秋の祭礼に行われる神事で、篠山三大奇祭の一に数えられ市指定の無形民俗文化財である。「沢田」の地名の起こりは、弥生時代の末期頃から古墳時代にかけて、葭や萩など生い茂っていた沼沢地であったものを農地に開墾し、沢田と呼ばれるようになったものである。人々に危害を加える恐ろしいものであり、何とか退治したい農民の願いが、鱧を大蛇に見立てた神事になったという。とはいえ、沼沢地を灌漑した土地は水害に見舞われることも多かったであろう、作物を台無しにする水害を大蛇に擬え、大蛇(水害)を鱧に見立てて退治する神事になったものであろう。



・祭礼ムードに包まれた沢田八幡神社



・祭礼に使われる2メートルを越える鱧は特別注文という



・なんとも豪快、そしてユーモラスな鱧切り

かつて「鱧切り祭り」は、氏子である前沢田、北沢田、河原町の三集落ごとに祷家(とうや・当家)で行われていた。しかし、現在では準備も大変なことから、公民館で行われる。神事は、古式に則った珍味を用意し、舞台を整え、大蛇になぞらえた鱧を引き出し実際に斬り付けて退治するまで続く。クライマックスである鱧切りは、周囲の諸役人が戸や障子を叩き、大仰な所作で盛り上るなか、鱧切り役の青年が鱧を持ち上げ、見事に切り落とすという所作を披露する。そのあと、参加者一同が打ち揃って沢田八幡に宮入して、祭礼が終了するのである。見方によれば、村の人々が古式に則って宴会をしているところを覗き見している感がなくもないが、祭りの原点を思い起こさせる神事ではある。
この「鱧切り祭り」は奇祭として知られ、民俗学者柳田国男の「日本の祭」にも紹介された。かつては、京阪神から観光客が訪れたというが、昔の文書と比べれば次第に簡素化されつつあることは否めない。

【撮影:2008年10月18日】