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菊 紋

 その昔、中国の南陽の甘谷というところに、菊が群生していて、その沢の水を飲むと100歳の長寿を得るという伝説があった。また陰暦九月を菊月といい、九月九日には「菊祭り」を行って幸せを願った。菊は花弁が陽光に似ているところから、日本では天皇のシンボルになった。鎌倉時代の初期の後鳥羽上皇がとくにご愛用になり、代々受け継がれてきたという。(十六菊)

【主な使用家】

 維新前に菊紋を使用していた公家は、広幡、水無瀬、七条、町尻、桜井、山井の六氏。大名では毛利、木下、伊達、京極、牧野、宗の諸氏。足利将軍家流の喜連川、吉良、最上の諸氏が使用していた。これらの氏は皇室となんらかの関係があったと思われる。
 夏目漱石の夏目氏は「井桁に菊の紋」で、その界隈を菊井町とよばれた。また南北朝時代の武将楠木正成も菊紋を下賜されたが、畏れ多いというので、半分を水に流した「菊水紋」を用いている。この楠木氏を祭神とする大阪の四條畷神社の紋も「菊水」だ。

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