杉の神紋を訪ね歩く。


杉は日本特産の常緑高木で、その大きく真っ直ぐに伸びたスガタは神々しさを感じさせる。 むかし、杉の木は神を請来するための依代として用いられ、神社の境内に多く植えられたこともうなづける。 『万葉集』にも「神南備の 神依板に する杉の 念いも過ぎず 恋のしげきに」という、神の森の、 神の宿る板にする杉のように、わたしは、しきりにあなたを恋している…、という歌が収められている。 杉紋はまことに神社にふさわしい紋といえよう。


 
大和三輪神社



三輪山をご神体とする大和の三輪神社の杉は、『日本書記』や『万葉集』に神杉として記され、 神社の紋は「三本杉」である。酒の神様としても崇敬を集め、 神社から求めた杉葉で作った鞠状の飾り杉玉(酒林)は、むかしから酒屋の看板となっている。
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●拝殿 ●拝殿の瓦に三本杉紋 ●幕に三本杉 (2008年11月2日)


近江建部大社



天平勝宝七年に建立されたという建部神社は近江国の一宮として崇敬を集めている。 祭神の大己貴命を神殿に祀ったときに植えた三本の杉が一夜に成長した。 その伝説にもとづいて三本杉を神紋に用いるようになったという。
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●拝殿 ●境内宝物殿の扉に三本杉紋 ●土塀瓦に三本杉紋 (2008年12月29日)


山城離宮八幡宮



山城と摂津の国境に位置する離宮八幡宮は、貞観元年(859)、嵯峨天皇の離宮であった現社地に 宇佐八幡宮より勧請されたものである。油の神様として有名で、 対岸に鎮座する石清水八幡宮は当社から分祀されたものという。
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●山門 ●本殿幕に三本杉紋 ●神馬に三本杉紋 (2007年8月25日)