拾い話
家紋から名字の判定



 家紋から自分のルーツとなる名字(苗字)がすぐわかれば大変便利であるが、 名字は十万、あるいは二十万もあるという。家紋と名字を見比べて、そこから求める答えを得ることは不可能に近い。 とはいえ、約一千年の歴史と伝統を有した家紋から、名字と家紋との関係をある程度まで見当をつけることはできるようだ。
 たとえば「三つ星に一文字」紋は、別名「渡辺星」と称されるように嵯峨源氏の流れを汲む渡辺氏が多用している。 渡辺氏からは箕田・松浦・波多など多くの名字が生まれたが、そのほとんどの家が「三つ星に一文字」、あるいは 一文字をはずした「三つ星」を用いている。だから「三つ星に一文字」「三つ星」を用いる家の場合、渡辺が名字でなくても 嵯峨源氏系の渡辺氏にきわめて近い関係にある…と見当をつけることができる。
 ところが、「三つ星に一文字」に酷似した紋に「一文字に三つ星」紋がある。この紋は大江氏 流の諸氏が用いるもので、先祖の阿保親王が一品であったことから「一品」の字を紋章化したといわれている。 「三つ星に一文字」と比べて一文字が上に付くか、下に付くかという 差だけだが、その由来からしても絶対といってよいほど渡辺氏が用いることはない。大江氏流で著名なのは 戦国大名毛利氏であり、他にも越後の毛利一族、出羽の長井・寒河江らの大江一族がこぞって「一文字に三つ星」紋を 用いている。いま、この紋を用いる家は、まず大江氏の流れを汲む可能性が高いといえそうだ。
 また、菱系の紋を用いる家は、清和源氏武田氏流の流れを汲む例が多い。武田氏からは 浅利・加賀美・上条・穴山・板垣・柳沢・於曽・油川・長坂・駒井らの諸氏、大名となった小笠原氏・南部氏・松前氏ら が分流し、一族が増えるごとに菱紋もさまざまな意匠が生まれバリエーションが最も多い家紋となっている。 菱紋を用いながら名字が武田や小笠原を名乗っていなくても、甲斐武田氏とゆかりのある家ではないかと推定できる。
 もう一つ、名字と家紋がを結びつける家紋として「四つ目結」がある。「四つ目結」紋は宇多源氏の流れを汲んだ 近江源氏を代表する紋で、氏神である沙沙貴神社をはじめ、佐々木氏から分れ出た六角・京極。朽木などの 中世武家はもとより加治・馬淵・隠岐・山中・塩谷・野木・尼子・黒田・山崎らの諸氏が目結紋を使用している。 いま、佐々木は称していなくても目結紋(四つ目結に限らず)を用いている家は、 一応、宇多源氏流の家と見当をつけられそうだしかし、宇多源氏でも庭田・綾小路・五辻などの公家は 「竜胆」紋を用いている。
 このように家紋と名字とが表裏一体をなす例もあるが、 大江氏流の毛利氏も「一文字に三つ星」以外に、沢瀉・五三の桐などを用いており、。 渡辺氏でも「三つ星に一文字」を用いないで、九曜・蔦・蛇の目・茗荷・竜胆など 二十以上の家紋が用いられている。さらに、目結紋も佐々木氏の専用紋ということもなく、 藤原氏から出た武藤一族も目結紋を用いている。
 家紋が生まれてから一千年、その間には多くの歴史の変革があり、はじめは家をあらわす印であった家紋も さまざまな変化にさらされた。加えて、佐藤氏や渡辺氏、鈴木氏などの大姓では、家を区別するために 本来の家紋を別の家紋に変えた例も少なくない。紋による名字の判定は、見えそうで見えない…一筋縄では いかないものとなっている。  
・上から:三つ星に一文字/一文字に三つ星/割菱/四つ目結
………
[資料:歴史読本432号]



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